競売物件への注目が年々高まっています。アパート経営をしてみたい!という人の注目です。
サブプライムローン、リーマンショック、ギリシャショックと何が起こるかわからない時代でも「家賃収入」は安定しているからです。その中でも競売物件によるアパート経営は、初期投資を抑えることができ、投資物件として適しているのです。
一般の方が土地を買って、新築アパートを建てるとなると予算は「億」になります。仮に4世帯入居の小さい物件・・・と、思っても、それぞれの部屋に台所やトイレと言った水回りが不可欠で、住宅設備は「戸数分」必要だからです。その点中古物件は魅力的なのですが、入居率が高い好利回り物件は所有者が簡単には手放しません。そこで「競売物件」です。
利回りの良い高収益物件でも、他の事情で手放さなければならない例は枚挙に暇がありません。
定年を迎えた普通のサラリーマンだった大谷さんは競売物件で念願の「不動産オーナー」になりました。
大谷さんは定年を迎え、退職金が入りました。この「老後の軍資金」を銀行に預けてもいまの低金利ではいくらにもなりません。すると「アパート経営」を友人から勧められます。この友人は何棟かのアパートを持ち、悠々自適に暮らしており、「株」より安定した収入になるといいます。
その気になった大谷さんは、この友人が懇意にしている金融機関に足を運びました。
いよいよここからが競売の本番です!!
金融機関の意見は「物件に関しては専門家に相談された方が良い」。金融機関は金融のプロ、物件は不動産屋、餅は餅屋ということです。
地域や予算、新築か中古の物件かも決まっていませんでした。そこで、アパート経営までのプラン作りからレクチャーします。不動産会社により方針は異なりますが、だるま不動産では、アパート経営についてしっかりとご理解いただくことから始めております。
アパート経営というと、寝ていても家賃が入ってくる気楽なイメージがありますが、実際にアパート経営で成功するには、非常に細かいところまで気を配らなければなりません。
例えば、空室でもこまめに清掃しておいて、内覧(物件見学)の際の印象を良くしたり、洋服が掛けられるフックを取りたりとといった気配りが、入居率を大きく上げます。不思議とこういった大家さんの「愛情」が込められた物件では、家賃の滞納が少ない傾向あります。
アパート経営にはリスクが伴います。
以下の三点はアパート経営の主なリスクです。
これらのリスクを最少限度に抑えるためには何をすればよいのでしょうか。
大谷さんにアパート経営の大筋はご理解頂いたところで、「基本方針」となる、新築を建てるのか、中古物件にするかを決めていきます。
単純にすると新築のメリットは中古のデメリットで、中古のメリットは新築のデメリットとなります。
上記の点を考慮した場合の私は「競売物件」をオススメしました。理由は次の通りです。
そして、競売物件について、以下のようなプランを提案いたしました。
利回り10%の物件であれば、単純に10年で取得費が家賃で戻ってきますが、15年〜20年で大きな修繕が必要となると想定して、築10年以内の中古物件なら修繕リスクを抑え、投資費用の回収がより確実となります。
全ての説明を終えると大谷さんは納得され、要件を満たしている競売物件を探して欲しいとご依頼されました。
しかし、当たり前の話ですが、好利回り物件はめったなことでは手放しません。
ましてせっかく建てた物件を10年も経たずに売り出すなんてことは余程のことです。
・・・余程のこととなっているのが、「競売物件」です。
これは当社の得意分野です。
そして意外なことに、アパートなどの「利回り物件」の場合、競売物件にありがちな「トラブルリスク」が大幅に軽減します。
事前に室内を見ることができないのが競売物件の辛いところですが、自宅なら生活スタイルによってコダワリもあるでしょうが、利回り物件はすでにその部屋に納得している入居者がいるので問題になりません。
また、家賃の滞納者などがいる場合も考えられますが、これは通常の中古物件の取引でも同じです。
つまり、 通常の中古物件の取引と変わらないのに、競売減価(市場価格より最低でも20%ダウンします)によって、より安く取得できる可能性から、利回りが良くなりやすいのです。想定月額家賃収入が同じでも、仕入れ値(取得費用)が安い方が得をするということです。
競売の公示に目を通しながら、業界の情報、まちの噂など「情報網」を駆使して3ヶ月。
公示の物件情報に目がとまりました。
大谷さんの予算にピッタリです。早速現地に行ってもらいました。やはりアパート経営に乗りだそうという方には現地に足を運ばれるようお願いしております。
買い物施設も近く便利、築10年以上経っているのに想像以上に建物がきれい
「是非、入札したい」
大谷さんは乗り気です。
入札に際して、現在の入居者の契約状況や空室率・滞納の有無を事前に調査しなければなりません。
大谷さんより「正式な調査依頼」をうけ、俗に言う「三点セット(物件明細書・不動産評価書・現況調査報告書)」の調査に裁判所に出向き、事件記録の閲覧を行います。この時もっとも気になるのは、賃借人の状況です。利回り目的である以上これが全てといっても過言ではありません。
物件明細書によると全10室の内8室が入居中で残り2部屋が空室です。入居率80%であれば競売物件の状況としては良い部類です。
さらに入居中の8部屋の詳細について現況調査報告書に目を通すと、いずれも正常な賃借人で、債権回収などを目的とした占有は無さそうです。
不動産評価書には、格段の法的制限などのマイナス面の記述はありませんでした。
どうやら三点セット(物件明細書・不動産評価書・現況調査報告書)を見る限り問題は無さそうです。
裁判所で必要部分をコピーして持ち帰り、現地調査に向かうことにしました。
大谷さんのおっしゃるように徒歩3分ほどのところに大きなスーパーがあり、駅からも徒歩10分圏内のまずまずの好立地です。
建物全体も築年数のわりに状態が良く、共用部分なども整理が行き届いており、競売物件となったのが不思議なくらいです。
おそらく入居者のモラルが高く、決め事をしっかりと守る方々なのでしょう。アパートの清掃状況などで入居者の人柄はわかります。
フムフムと大谷さんの気持ちになりひとりごちていると、201号室から居住者が出てきたので話を聞いてみました。
どうやら執行官が調査にきた際に事情を聞き、住んでいる場所が「競売」ということに不安になっているようです。
また、大家が代わった場合、退去しなければならないのかというが一番心配だといいます。
私は立場を明かして、当方の依頼者が入札に参加する予定であり、落札した後は今住んでいる方には引き続き入居してもらう予定であると伝えました。
すると安心したのか、いろいろな話を教えてくれました。これこそ「現場」の醍醐味です。
話を総合すると8件のうち6件は、そのまま入居を希望しており、残りは日頃顔を合わせないのでわからない。そして顔を合わせる度に、不安で相談をしているといいます。
無事に落札できたら、改めてということで名刺を置いて引き上げました。
「落札者によっては追い出されちゃうんだよなぁ」
言葉を交わせば情が移ります。大谷さんに「大家」としての責任が芽吹いた瞬間です。
現地調査を終え、大谷さんの意思を再確認して入札することが決定しました。
次に決めるのは入札価格です。
投資対象の不動産競売について、過去の事例を見ると単純利回り12〜13%程度(都心の場合にはさらに下がります。)の落札が最も多いものです。この物件は状態も良く、入居率も高いことから単純利回り10%程度は狙えると仮定しました。
現在の賃料は一軒4万円〜4万5千円となっており、下限を基準とすると4万円×8室で月額賃料32万円。空室の2件を足すと40万円。
しかし、取らぬ狸の皮算用をするより、実際に収入が見込める賃料で判断したほうが無難です。
年間単純利回り10%(10年間で投資分を回収できるとみて、32万円×12ヶ月×10年)で算出した購入額は3840万円となります。
しかし、築年数も経っているので外壁の塗りなおしなどの手直し費用をマイナス要素として見積もり、更に6〜7件程度のライバルの入札があると想定すると、最低売却価格に30%弱上乗せし手見ることにしました。
入札価格32,006,000円。
算定方法、基準は企業秘密です。大谷さんは理由を説明しております。
ちなみに、大谷さんに好きな数字を聞いたところ「6」とのので、戦術的に6千円を。あまり切りの良い数字だと同額となってしまうことがあるのです。
後は開札日を待つだけでとなりました。
入札してから一週間、いよいよ開札日です。
地裁の不動産売却場へと向かいました。
午前10:00分。
いよいよ開札です。
入札書が物件ごとにチェックされ30分くらい要した後、開札結果の読み上げが始まります。
次々と開札結果が読み上げられます。
いよいよ大谷氏が入札した物件となりました。
まず入札件数が発表されました。
予想外に多く8件。正直少し嫌な予感がしました。
次に上位2名の入札者の読み上げです。不正がないという証として「次点」の発表されるのです。
「入札人○○、入札価格31,555,555円」
「入札人大谷三郎 入札価格32,00,6000円」、「以上の結果大谷三郎を入札価格32,006,000円で最高価買受申出人と決定します」
無事に落札です。ホッとしてぐったりします。改札の直後は。
入札の価格を決めるのは、非常に難しく誰もが、できるだけ安く、そして確実に落札したいのです。
落札後一週間が経ち、売却許可決定が確定したところで各賃借人に対し、オーナー変更の連絡及び賃貸借契約の差し替え手続きの連絡を開始しました。
入居している方にしてみればオーナーの変更は迷惑以外なにものでもありません。
まして競売となると、自分達の知らないうちにいきなり執行官が来てあれこれ聞いてきたと思ったら、今度は見ず知らずの人間がいきなり新オーナーとして現れるのです。
そこで賃貸借契約の差し替えは丁寧に進めなければなりません。一世帯でも揉めてしまうと他にも影響がでてきます。できるだけ郵送などではなく直接お会いするのが基本です。もちろん、プロの「代理人」でも結構です。
賃借人からは「引き続き居住できるのか?」「預けてある敷金はどうなるのか?」「 敷金や礼金は新たに必要になるのか?」「家賃の変更はあるのか?」などです。
法的なことも絡んでてくるので、実際にアパート経営に乗り出す際は信頼できるパートナーを探されると良いでしょう。
なお大谷さんは、事前調査の成果もあって、8部屋全てにおいてスムーズに差し替え(オーナー変更に伴う契約変更)を行うことができました。
こうして、大谷さんのアパート経営者としての人生が始まったのです。
その後、大谷オーナーから、入金管理を含めた管理委託契約(募集等の方法や修繕計画などアパート経営における総合計画の立案及び実行)、残り2部屋を入居させる事を改めてご依頼いただきました。